BASIC GUIDE
防煙垂れ壁は、煙の広がりを抑えて避難と排煙を助けるための設備です。
火災時の煙は天井付近にたまりながら横方向へ広がります。防煙垂れ壁は、その流れを区切って煙を一定範囲にとどめ、排煙設備が機能しやすい環境をつくるために用いられます。
設置寸法や500㎡・50cmなどの基準、ガラス製との比較、不燃シート製そのものの特長は、専門ページで詳しく整理しています。
01 / ROLE
防煙垂れ壁の役割は、煙を「せき止める」のではなく、広がりをコントロールすること
火災が起きると、熱を持った煙は上昇し、天井面に沿って広がっていきます。煙には視界を奪うだけでなく、有害なガスや熱を運ぶ性質があるため、避難経路へ急速に流れ込ませないことが重要です。
防煙垂れ壁は、天井から下方へ設ける壁によって煙の横方向への流動を妨げ、防煙区画をつくるために使われます。国土交通省の建物用語集でも、防煙垂れ壁は「煙の流れをせき止めるため、天井から50cm程垂れ下がっている壁」と説明されています。
防煙垂れ壁単体で煙を屋外へ排出するものではありません。建物全体の排煙計画・防煙区画の一部として機能する設備です。
02 / REGULATION
建築基準法令では「防煙壁」として規定されています
一般に「防煙垂れ壁」と呼ばれる設備は、建築基準法施行令第126条の2に規定される「防煙壁」の一つです。現行の規定では、間仕切壁のほか、天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁・はりなど、煙の流動を妨げる一定の構造が防煙壁として扱われます。
また、2025年11月施行の改正では、防煙壁として扱うことのできる構造の対象が拡大され、一定条件を満たす準耐火構造や、天井面から50cm以上突出したはりを防煙壁として扱えることが明確化されました。設計の自由度が広がる一方で、建物用途・規模・室面積・天井高さ・排煙方式などによって適用条件が変わります。
第126条の2・第126条の3
排煙設備の設置対象、防煙区画、防煙壁、排煙口などは相互に関係します。個別案件では設計者・所管行政庁・指定確認検査機関等に確認してください。
※法令について:本記事は一般的な考え方を整理したもので、個別案件の適法性を判断するものではありません。用途・規模・計画条件、自治体の取扱い等により判断が異なる場合があります。
03 / TYPE
防煙垂れ壁には「固定式」と「可動式」があります
防煙垂れ壁は、常時天井から下がっている固定式と、通常時は収納され火災時に降下する可動式に大きく分けられます。どちらが適しているかは、空間の用途や意匠、設備計画、維持管理の考え方によって変わります。
FIXED TYPE
固定式
常時所定の位置に設置される方式。作動機構を必要とせず、構造がシンプルです。透明材料を採用することで、視線の抜けや開放感に配慮できます。
- 常時設置されている
- 機械的な作動部がない
- ガラス・不燃シートなど素材を選べる
MOVABLE TYPE
可動式
通常時は天井内などに収納し、火災時に降下させる方式。日常時の見え方を抑えやすい一方、作動機構を備えるため、設備計画や保守の検討が必要です。
- 通常時は収納できる
- 火災時に作動して降下
- 点検・保守を含めた運用計画が必要
ライフアートプランテックでは、安全性と意匠性を両立するため、固定式防煙垂れ壁のみをご提案・施工しています。
04 / MATERIAL
固定式でも、素材によって安全性・重量・意匠性は大きく変わります
固定式防煙垂れ壁では、透明性の高い板ガラスが長く使われてきました。一方、地震時の破損・落下リスクや建物への重量負担を考え、近年は軽量な不燃シートを使う選択肢もあります。
| 比較ポイント | 板ガラス製 | 不燃シート製 |
|---|---|---|
| 透明性 | 高い | 高透明タイプを選択可能 |
| 重量 | 重量が大きい | 軽量化しやすい |
| 破損時 | 割れ・破片飛散への配慮が必要 | ガラスのような破片飛散がない |
| 形状対応 | 加工・納まりに制約が出る場合がある | 曲線・段差・変形などに対応しやすい方式もある |
| 改修 | 重量・搬入条件の確認が重要 | 既存施設の軽量化改修にも検討しやすい |
パラスモークには、直線・長尺に適した「テンションタイプ」と、段差・クランク・円形など複雑な天井形状に対応しやすい「パネルタイプ」があります。空間条件に応じて方式を選ぶことで、防煙性能だけでなく見た目や施工性にも配慮できます。
05 / EARTHQUAKE
防煙垂れ壁は、火災時だけでなく「地震時に頭上にある設備」として考える
防煙垂れ壁は天井付近に設置されるため、地震時には落下や破損による二次被害も考える必要があります。国土交通省が熊本地震後にまとめた資料では、天井材やガラス開口部などとともに、防煙垂れ壁の落下・被害事例が報告されています。
防災設備は「火災時に機能すること」だけではなく、地震後にも建物を安全に使い続けられるかという視点が重要です。特に人が多く集まる商業施設、駅・空港、病院、ホテル、公共施設などでは、頭上設備の重量や破損時の挙動を含めて検討する価値があります。
国土交通省は、非構造部材の被害として「防煙垂れ壁の被害」を取り上げ、防災拠点となる建築物では機能継続に係る対策が必要と整理しています。
06 / SELECTION
設計・改修時に確認したい6つのポイント
法令・防煙区画
排煙方式、防煙区画、必要な垂れ下がり寸法などを計画初期に確認します。
天井形状・設備との干渉
梁、照明、空調、サイン、スプリンクラー等との取り合いを確認します。
安全性と重量
地震時の破損・落下リスク、下地への負担、搬入・施工時の扱いやすさを比較します。
視界・意匠性
透明度、フレームの見え方、店舗やロビーの視線の抜けを確認します。
新築か改修か
既存下地を活かせるか、営業中施設での施工条件、搬入経路などを事前に整理します。
維持管理
固定式・可動式それぞれの構造に応じ、点検や長期使用を見据えた方式を選びます。
防煙垂れ壁は、天井や設備が決まってからでは納まりの選択肢が狭くなることがあります。意匠・防煙区画・施工条件を同時に整理することで、よりすっきりした納まりを検討しやすくなります。
07 / FAQ
防煙垂れ壁についてよくある質問
Q. 防煙垂れ壁は必ず50cm必要ですか?
建築基準法施行令では、防煙壁の一つとして「天井面から50cm以上下方に突出した垂れ壁又ははり」等が規定されています。一方、排煙設備の構造や天井高さ、準耐火構造の防煙壁など、計画条件によって関係する規定が異なるため、個別案件では設計者や確認検査機関等への確認が必要です。
Q. 防煙垂れ壁と防火区画は同じものですか?
同じではありません。防煙区画は煙の流動を抑えることが主目的で、防火区画は火炎や熱の拡大を一定時間抑えることが主目的です。必要とされる部位・構造・設備も異なります。
Q. ガラス製から不燃シート製へ交換できますか?
既存建物の下地、天井形状、防煙区画、寸法、施工条件などを確認したうえで検討します。パラスモークはガラス製防煙垂れ壁からの改修・交換にも対応しています。
Q. 複雑な天井形状にも対応できますか?
パネルタイプでは、段差・クランク・変形・円形ラインなどへの対応が可能です。実際の納まりは図面や現場条件を確認してご提案します。
REFERENCE